裏側の悪意-2

1/22
前へ
/22ページ
次へ

裏側の悪意-2

跪いた姿勢のままで、芹沢さんの表情が一瞬崩れた。 「その上で、芹沢さんのこと信じてるから頼んだんです。きっと」 苛立ちにも見える、笑みの消えたその顔に私はこれが「正しい」のだと確信して微笑みかける。 「コーヒー」 「……え?」 「おかわり、淹れましょうか?」 そう言った私に、拍子抜けた顔をした。 亨は芹沢さんを信じたのだ。 私は毅然としていればいい。 だから、これが「正しい」。 芹沢さんは、やがて苦笑いを浮かべて「降参」とでも言うように両手を挙げ、私は小さく舌を出して笑って見せた。 「正しいですか?」 「正しいよ。僕は歪んでるから結構効くなあ」 芹沢さんが下手くそな演技で胸を押さえ苦しんで見せた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1244人が本棚に入れています
本棚に追加