裏側の悪意-2

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「春妃ぃー……」 美佳が私を呼ぶ声がして、ぷつ、と張りつめたものが和らぐ。 空気の余韻を振り払うようにして、背筋を伸ばして美佳のいるソファへと視線を向けた。 「……水、ちょうだい」 「美佳、起きたの?」 私が慌てて立ち上がる時には、芹沢さんも一歩下がって少し距離が出来ていて、まるで何事もないような空気が流れる。 事実、何かあった、というわけじゃないけど。 何もなかった、とも言えない空気だった。 水を汲みにキッチンに行こうと芹沢さんの前を通過したとき、ぼそりと小さな呟きが耳に届く。 「……狸め」 「えっ?」 思わず立ち止まって聞き返してしまった。
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