裏側の悪意-2-2

16/22
1189人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
ぐん、と急に近付いた顔が至近距離で停止する。 近すぎて良く見えないけど、目が三日月に歪んでいた。 「嫌いじゃないんだけどね、そういう子を黙らせるのも」 どくどくと、鼓動の早さで胸が痛い。 だけど、怯んで黙ってやられるわけに、いかない。 何か、何か行動を。隙を。彼の油断を。 焦りながらも目は忙しなく、その場を脱出するための何かを探す。 そのおかげか、ふっと一瞬、芹沢さんの目が焦点を失ったことに気が付いた。 「……ルール違反、かな」 何を思ったのかそう呟いたその隙に、思い切り頭をあげて芹沢さんの鼻面目掛けて頭突きした。 ガツン、と、言うほどには行かなかったが鼻頭に当たれば、少しの衝撃でも十分だ。 「うっ!」 驚いて鼻を抑えている隙に、ソファと彼の間から抜け出した。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!