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「お前……」
「こっち」
安藤がバックヤードの入口を指差した。
その奥に入れば、従業員も疎らにしか通らない場所になる。
安藤について行くと、重い非常扉を押し開けて非常階段のフロアがあった。
「……どういうつもりだよ」
僅かな声でも大袈裟に反響する空間。
問い詰めても、狼狽える様子はない。
盗難騒ぎにされたくないのは当然だ、だから端から白を切るつもりはなかったんだろう。
だけど、安藤は頑なに携帯も財布も返すつもりはないらしく、そんな素振りも見せない。
上目遣いで俺を見る目にますます募る苛立ちを懸命に抑え、もう一度聞いた。
「俺の、携帯と財布。早く出せ」
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