悪意の裏側

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「春妃!」 玄関の鍵は開けっ放しで、一瞬珍しいなと思いつつ足元を見るとなぜか俺のものじゃない男物の革靴が目に入り、かっと頭に血が上る。 早足でリビングまでの廊下を抜けて、そこに居たのは春妃ではなく、何やらティッシュペーパーで鼻を抑えている芹沢先輩だった。 「なんで、先輩が」 廊下と繋がる中扉を開けて固まる俺に、焦ることもなく飄々としたもので。 「ああ、なんだ。もう帰って来ちゃったか。安藤も不甲斐ないな」 なぜここに先輩が一人でいるのか。 何より春妃がリビングのどこにもいないということに気がついた。 思い出してみれば男物の靴に目が向いて気づかなかったが、春妃の靴が玄関に見当たらなかった。
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