悪意の裏側

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「……どういうことですか。春妃は」 この部屋に入れるのは、春妃だけだ。 先輩がここにいるということは、少なくともこの空間に春妃が一緒にいたということだ。 湧き上がる衝動をなんとか抑えながら、先輩との距離を詰める。 だが、先輩から帰ってきた言葉は、問いかけの答えじゃなかった。 「こんなに早いってことは、安藤と彼女、少しも揺れたりしなかったってことか」 「安藤? なんの話を」 「仕事の信頼関係さえ崩れてしまうって、今更そんな泣き言を言うから発破かけてやったんだけどな」 その言葉に、思い出したのは昼間の安藤の電話の相手だった。
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