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雑踏の中で二人抱き合って、目を閉じるとたくさんの人の声が四方から聞こえてくる。
亨が両腕を少し上げ私の顔を隠すように囲う中で、私たちは唇を重ねた。
いちごの香りとほんのり残る甘さに気づいた彼が、ぺろりと口内を舐めて少しだけ隙間を作る。
「いちごの味」
「さっきいちごミルクの飴もらった。タクシーのおじさんに」
「子供か」
触れ合った唇が、「懐かしいな」と呟いて笑った気配がしたのはほんの一瞬。
すぐに深く重ね舌が絡まる。
いちご味のキスは最初の頃の約束のキスを思い出させる。
あの頃から、私はもう。
離れられない気がしてた。
「も、離れるのやだ」
「ん」
「一緒に住むから、お願い」
もうこの先何があっても。
私は亨の隣がいい。
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