第二章

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「今日は君に贈呈品があってね、こういった場を設けた次第だ」  そう云うと、御主人様は立ち上がり、私の手に『ある物』を置いて下さいました。 「これはラジオだ。使い方を今から教えよう」  御主人様はラジオの扱い方を丁寧に教えて下さいました。  当時、ラジオは貴重品の一つでした。町の中では大きな店に一つある程度の貴重なものです。ラジオにはいくつかの放送局がありましたが、町中でのラジオの選局権は店主でしたので、私は聞きたいものを聞くことが出来ずにいました。しかし、御主人様より与えられたラジオは私だけの物でしたので、自由に選局して聞くことが出来ました。私は余暇にラジオを愉しみました。盲目である私の知らない世界がラジオの中には沢山ありました。ラジオは音だけで全てを表現するものです。盲目の私と相性の良いものでした。新聞や本などで綴られている時事問題、沢山の物語、芸術の素晴らしさを、ラジオは音で教えてくれました。ラジオから聞こえる全てが新鮮で有意義な物でした。ラジオは多くの知識と教養を私に与えてくれました。今まで識ることが出来なかったものを識る事は幸せなことでした。   ◆
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