第一章

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  ◆  私には一つの癖と申しますか、執着がありました。  周囲の汚れが気になって仕方が無いのです。  私の触感は非常に敏感な為、触れた場所が汚れているか否かが判ってしまいます。私の活動範囲は限られてます。自宅の中は寸分違わぬ程に完璧に熟知していましたので、埃一つあれば違和感を感じてしまい、些細な汚れがあれば慌てふためき、正常な状態に修復したい衝動に駆られてしまうのです。  盲目だからからこそ、居場所を完璧な状態に維持しなければなりません。少しでもおかしな場所があれば、私は空間を把握することが困難になってしまいます。怪我をすることも考えられました。ですので自宅を綺麗な状態を保つことに、私は執着しました。  もちろん自身の体や衣服を清潔に保つことにも執着しました。室内の清掃をすれば当然ながら体と衣服が汚れます。私は毎夜風呂場で体の汚れを洗い流し、衣服を洗濯しました。  そして、私自身の在り方も清潔さを求めました。心が清くあるように勤め、私欲を律し、後ろ暗いことをしないようにしました。家族が笑顔を保てるように尽力しました。  両親は、そんな私を「潔癖性、清廉潔白」と評されました。  その言葉の意味を識り、私は元来の潔癖性であることを理解し、清廉潔白で在ることを是とする性格を持っていることを理解しました。   ◆
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