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料理の噂を聞きつけた御主人様は店を訪れ、店内で料理を食した後、料理人に会いたいと仰ったそうです。
店主が拒むのを聞かず、御主人様は厨房へと来られました。
私は生気を失しつつありましたので、見知らぬ御主人様に対して何も感情は抱きませんでした。
「君の料理は大変素晴らしい」
御主人様は仰いました。とても温かく愛の籠もった声でした。
私はその言葉に救われました。明日にでも死のうと思っていた心が一瞬にして晴れ上がったのです。
紳士的な御主人様は、私を侍女として屋敷に迎えたい旨を申し出て下さいました。侍女になれば生活に不自由はなく満足いく給金を出すこと、借金があるなら代わりに返済をすること。加えて知識と教養を身につけてくださる旨を仰いました。
「私は盲目でございます」と素直に申し上げると、御主人様は即座に「盲目で在ることは気にする必要はない」と仰って下さいました。とても嬉しい言葉でした。
私にとっては願っても無いことでございましたので快諾させていただきました。御主人様は抵抗する店主をいとも簡単に制止して、私を連れ去って下さりました。恐らく店主に大金を払い、私を買い取って下さったのでしょう。
◆第二章へ続く◆
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