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第一章
題目:『黙女』(もくじょ)
作:紅茶嶺文(こうちゃたかふみ)
文字数:本文約30074文字
(あらすじ792文字)
(合計約30925文字)
ジャンル:ホラー
***あらすじ***
私は生まれつき視覚と嗅覚がありません。両親は私の将来を憂い、働くために必要な事を躾けてくれました。
盲目で嗅覚もない私は、幸いなことにきめ細かい味覚と寸分違わぬ採寸と質感判断が出来る触感を持っていることが判り、料理を生業とする道を目指すことになりました。両親から将来の私が在るべき姿を教わり、私は両親の願いを叶えるべく、在るべき姿を追い求めました。
視覚と嗅覚のない私にとって料理は大変なことです。火の扱いと香りが判らず、頼りになるのは味覚と触覚のみ。家族の助けで火と香りの問題を乗り越えて、料理の腕で仕事が出来るまでに成長しました。
当時は戦時下で空襲が頻繁にあり、私は家族を失い独り身となりました。
親戚等の身寄り先が無く、自らの力で生活をしなければならない状況になりましたが、幸いな事に料理の腕がありましたので身銭を稼ぎ生活をすることが出来ました。
私の料理は評判を呼び、とある紳士に見初められて、紳士の屋敷で侍女として働くこととなり、彼は私の御主人様となりました。
御主人様は私の料理を大変喜ばれ、私は屋敷内で平和な日々を過ごしました。
屋敷には、客人が良く訪れます。私は来客対応の業務を仰せつかり、客人を案内し、御主人様自慢の芸術作品を飾る展示室へと案内し、料理を作りもてなしました。
ある日、御主人様は言いました。
「褒美にひとつ願いを叶えよう」
私は屋敷の生活に満足しており願いがありませんでした。ですので実現不可能な願いをしました。
「視力を戴きたく存じます」
しかし、その願いが叶うこととなり、私は視力を得ました。
目の前に広がる光景はどれも素晴らしく、私の世界は大きく広がりました。
しかし、私は視覚を得たことで今まで識らなかった事実を識ることとなりました。
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