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「今日はありがとう。これ、少ないけど追加で」
「いえいえ。こちらこそいつも贔屓にしてくださってありがとうございます。どうぞまた」
「ああ、そのときはよろしく」
去っていくスーツ姿の男性を見送って、手に握らされた紙幣の数を数えてみる。
諭吉が5枚。前金と合わせて15万。今回はそこそこ出してもらえた。
チュッと軽くキスを落としてから財布に仕舞う。
今夜は妹を誘ってディナーにでも行こうか。
奮発して美味しいものを食べさせてあげよう。
そうと決まれば行動は早い。
ポケットからスマートフォンを取り出して、妹のダイヤルをコールする。
『もしもーし、兄ちゃん?』
「そうだよ、霞(かすみ)の愛しの兄ちゃん」
「げぇ、何言ってんの。頭おかしくなった?』
「ひどいなぁ。そんなこと言うやつは今夜のディナーに連れて行ってやんないよ」
『え、嘘、嘘だから! 待ってて、すぐ着替える!』
「はいはい、慌てないでゆっくりね。とびきりかわいい霞を見せてちょーだい」
ブツリ、音をたてて通話が切れる。
端末を再びポケットに入れて、俺はネオン街の向こうにある住宅地へと足を向けた。
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