街角アイドル

2/11
前へ
/18ページ
次へ
「今日はありがとう。これ、少ないけど追加で」 「いえいえ。こちらこそいつも贔屓にしてくださってありがとうございます。どうぞまた」 「ああ、そのときはよろしく」 去っていくスーツ姿の男性を見送って、手に握らされた紙幣の数を数えてみる。 諭吉が5枚。前金と合わせて15万。今回はそこそこ出してもらえた。 チュッと軽くキスを落としてから財布に仕舞う。 今夜は妹を誘ってディナーにでも行こうか。 奮発して美味しいものを食べさせてあげよう。 そうと決まれば行動は早い。 ポケットからスマートフォンを取り出して、妹のダイヤルをコールする。 『もしもーし、兄ちゃん?』 「そうだよ、霞(かすみ)の愛しの兄ちゃん」 「げぇ、何言ってんの。頭おかしくなった?』 「ひどいなぁ。そんなこと言うやつは今夜のディナーに連れて行ってやんないよ」 『え、嘘、嘘だから! 待ってて、すぐ着替える!』 「はいはい、慌てないでゆっくりね。とびきりかわいい霞を見せてちょーだい」 ブツリ、音をたてて通話が切れる。 端末を再びポケットに入れて、俺はネオン街の向こうにある住宅地へと足を向けた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加