私の知らない色

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すると、彼がモニターから目を離して私を見た。 「……と、言いつつ実は男だったりしてな」 私は呆れてため息をついた。 そうでないことはこの男が一番よく知っているはずだ。 「今日はやけに突っかかってくるのね?」 「そっちも今日はやけに気合入った服装だと思って【デキる女】って感じ」 「答えになってないし。悪いけど、服装だって普段と変わらないから」 彼から目を背けて否定する。 「だいたい……私の服装になんて興味ないくせに」 彼との会話に嫌気がさし、目を反らす口実に時計を見た。 「ごめん、もう行く」 私は椅子をデスクに仕舞ってワインボトルの入った長細い紙袋を手に取った。 「何かあったら連絡して。お疲れさま」 オフィスのドアまで小走りに移動して、ドアから身体が半分通過したところで半歩引き返す。 「言っとくけど、女子会だから!」 私は彼の返事を待たずに急いでエレベーターに向かった。
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