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だが“俺に”全部話そうとする
志緒が可愛くて可愛くて。
まるで自分のことは
隅から隅まで判っていてくれと
言うように。
あのわずかな蜜月の間だけ、
俺の不安はなりをひそめていた。
──今思えばあれは
志緒の不安そのもの
だったのかも知れない、と思う。
俺だけが志緒の
心の中を覗いて、
安心していたのかも知れない。
だったら、彼女の中に
俺を疑う気持ちが生まれたことも
仕方ない気がする。
誠司の流言を信じ込んでしまうことも。
“こんなにたくさん話しているのに、
拓海さんの気持ちが判らない──”
……とか。
今だから判ることだが。
……だとしたら相当
可哀想なことをした。
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