溺れるふたつの体

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  「どうしますか」 「……出る」 「でしょうね」 はああああと盛大に 溜め息をつきながら、 カズヤは手元のタブレットで ささっと先方に返すメールを 作ってしまう。 女子中学生や高校生に 負けないビジネスマンの早業よ。 「ところで、拓海」 「ん?」 「イベント出演の件は これでいいとして、 あちらのお偉方に 挨拶をしないわけにはいかないと、 俺は思うんですが」 「……何とも、 人の罪悪感を刺激する 言い回しだな」 「当たり前ですよ。 あなたの全身が売り物でなければ、 とっくに一発くらい 入れてると思います。 嫌味のひとつくらい言わないと」 ひたすら敬語を貫くカズヤに、 背中の辺りがひやりとする。 .
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