溺れるふたつの体

34/40

1190人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
  ──志緒のこと、 連れてくればよかったか。 ちらちら顔を覗かせる、 どこか弱気な自分に苛立った。 静かに葛藤しているうちに エレベーターは最上階に停まり、 ベルスタッフに案内され 足音の響かないふかふかの 花パターンが敷かれた廊下を歩く。 いつもはミリタリーブーツで リノリウムだのパルティだのを ごつごつ踏み鳴らしているから、 少し変な感じだった。 こういう違和感を覚える自分は まだ世間を知らないな、と思う。 芸能人ってだけで、 周囲は高級品ばかりなんだろうと 人には思われるが、 むしろその逆のように俺は感じる。 人には口が裂けても言えねえが。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1190人が本棚に入れています
本棚に追加