溺れるふたつの体

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  乗る車を派手にしたのは そういう現実からの アンチテーゼかも知れなかった。 こういう見栄は 新しい仕事とカネを呼ぶ。 夜の世界を牛耳る人間から 空気で教わったことだ。 考えているうちに 廊下の一番奥の部屋、 わざわざ仕切りに伸縮門扉を 設けたスイートルームまで 連れてこられた。 ……一室、どころじゃねえ。 「ああ、すみません。 ここで結構です」 カズヤが慣れた様子で ベルスタッフが中の人間を 呼び出そうとするのを止める。 2・3話し、 ベルスタッフは笑顔で退いていった。 それを見届けてから、 カズヤはふうと溜め息をつく。 「こんな接待は、 朱里も受けてないですよ」 「……あ、そう」 .
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