溺れるふたつの体

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  それを聞いたからって、 何か嬉しいわけでもない。 俺の性格を 判り切っているカズヤは、 少し緊張した面持ちで インターフォンを押す。 中からの応対に カズヤが答えると、 「開いてますよ」と返ってきた。 その声と同時に ガチャンと鍵が外れる音。 が、それよりも。 “開いてますよ” 俺は、歌手だ。 甘っちょろい腕だがギタリストだ。 腐ってもミュージシャンで、 最低限の耳は持っている。 そんな俺が、間違えるわけがない。 ──その声は間違いなく、 昔慕ってた男のものだ。 .
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