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思い通りになって
当然だってくらいの
犠牲は払ってきた。
それでも。
「……今頃、なにを……」
志緒の抗う声の中に、
甘さが混じる。
こんな自分勝手で
乱暴な愛撫も
結局受け入れてくれようとする
彼女の慈悲深さに、
泣きたくなってしまった。
細くて丸っこい肩に
額を押し付けて、
落ち着くために息を吐く。
「自分も、同じように
やり捨てられるとは
思わなかったのか。
ぼろぼろに傷付くとか、
考えなかったのか」
心の底から、志緒に悪いと思う。
誰かを信じるとか信じないとか、
そんなものに
相手がどうだから……なんて
関係ないことで、
すべては自分の問題だ。
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