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俺は、志緒を信じたかった。
志緒だけは、信じたかった。
だが、俺だってガキだったから
自分の中に巣食う疑心暗鬼を
どうにもできなくて。
……これでも
俺を好きでいてくれるかと。
選んでくれるのかと。
訊きたかったのは、
それだけなんだ。
──昔も、今も。
「……考えなかったわけじゃ、
ないよ……」
掠れた声の中に、涙が混じる。
……また、泣かせた。
「計算された
嘘を吐かれたら……
騙されるかも知れない。
けど、拓海さんの言うことが
本気かそうじゃないかくらいは、
判るよ……」
とくん……と、
さっき撃ち抜かれたばかりの心臓が、
甘く疼いてまた血をこぼす。
……もっと。
もっと、言ってくれないか。
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