溺れるふたつの体

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  「……嘘吐け」 ややこしさに 命をかけてるような 俺のことなんか、 とっくに全部お見通しだと。 言ってくれ、……もっと。 「嘘じゃないよ…… じゃなきゃ、 あんな簡単に全部、 許すなんてできない……」 志緒の言う“全部”が── 最後の夏、強引に部屋に連れ込んで 初めて抱いた時のことを 言っていると、 何故だか判った。 許したってことは、 抵抗しようと思えばできた、 ってことか。 征服したつもりでいたのに…… そうか、 志緒は俺に全部くれたのか。 あえて。 「……お前、バカじゃねえの」 「バカだよ…… バカだから、 今でも忘れてないんでしょ……」 また心臓が疼く。 俺はもう死にそうだ。 こんな絶頂感、知らねえんだけど。 .
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