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「渡辺は、大学の友人だ。結婚式ではなかなか新婦と2人きりにはならないものだから、サプライズタイムを作ってやった」
「へぇ……」
まもちゃん、友達いたんだ……しかも、その友達に何かしてあげるだなんて。
そのことに妙に感心して見上げると、怪訝な顔をされた。
むむっ、もしや読み解かれなかったのか?
「馬鹿は、大概にしておけ」
「ぬぁああっ!?」
顔を見たら馬鹿ばかって、失礼極まりない。
ほんっとに、上司じゃなくて悪魔なんじゃないの!?
なんて思っていても、秒速でその思いを封印する。
これ以上馬鹿だと言われたら本当に馬鹿になるかもしれない。
「えと……つまりその、サプライズタイムを理解していなかった私がうっかり新郎新婦のお時間を邪魔してしまったということでしょうか」
「そうだ」
だからお前は馬鹿って言うんだ、といった意味の視線を送られた気がするけれど明後日の方向へ視線を向けることで無視した。
知らなかったもんは知らないし、私だって遊んでたわけじゃないやーい。
と言ってまもちゃんを睨みつける度量があれば、私じゃない。
まもちゃんにとっての下僕になりつつある瑠璃のできることと言えば……
「すみませんでした」
素直に謝ることっ!
瑠璃ったらあったまいいっ!!
なんててへぺろ顔を足しながら頭を下げると、まぁいいと軽くあしらわれた。なんだかいつもよりまもちゃんが優しい気がするけれど、優しい分にはいいことにしよう。
うん、そうだ、そうしよう。
なんて考えは甘かったのか、甘くはなかったのか。
内心で、良かった~なんて思いながらぼやぼやしているうちに、誰もいないこの室内でなぜだか壁に追い詰められていた。
――なんで!?
と思ったけれど、時すでに遅し。
伸びてきた手に、私のメガネをポイと取り上げられた。
「ひゃあああっ」
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