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よもや、寝耳に水。
奇想天外。
地震雷火事親父。
エトセトラ、エトセトラ……
思いつく限り、全ての「想定外」に当たる言葉を脳内に駆け巡らせながら、私は部長室で固まっていた。
「おーい、聞いてるかーい、坂下くん」
そう呼びかけられて、私はようやく自身の脳内火事に鎮火を仕掛け、現実に戻ってきた。
「……はい」
鏡は見ていないが、恐らく虚ろな顔で、抑揚もない返事だろう。
けれど取り繕う余裕など、合ったものではない。
何せ、今世紀最大の……と言えば大げさと言われるかもしれないが、私は大ピンチなのだ。
「一応、出ていくまでに1週間の期限はあるしね。引き継ぎとかもあるだろうし、まぁ大変だろうけどさ。すまんね、ホントに」
目の前の立派な椅子に座る部長の、そのデップリしたお腹に、豪快なパンチングを仕掛けたらどれほど愉快だろうか。
いや、パンチングマシーンよろしく、反動で自分の方が吹っ飛ぶのかもしれない……
という、限りなく非現実な妄想に駆られながら、再燃しそうな怒りを鎮めて、ロクな挨拶もせずに部長室を後にした。
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