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午前10時。
所謂、若手職員(30歳未満)に該当した者たちが順に呼び出され、リストラを告げられた。
4月に大手企業からの買収にあい、今後どうなるのかと、様々な憶測は飛び交っていた。
当然、リストラもあることとは想定していたけれど……けれど。
今までの業績やらを一切無視して、とりあえず30歳未満は足切り、と言われて絶望したのは言うまでもない。
小さいながらも、自社ブランドを気に入り、顧客が増えるごとに喜びも感じていた。それなりに愛社精神も芽生え、これからと意気込んでもいた。
だからこそ。だからこそ、人間性などまるで無視された、生まれの差だけで切られた自分が情けなすぎた。
理由だって酷すぎる。20代はまだ若いから再雇用の口がたくさんあるだろう。……って、そこにアテはあるのか!? という話だ。
お先真っ暗感も半端なくて、私は自分のデスクに戻るなり、バタンと倒れた。
あぁ……万事休す。
大学卒業間際、ギリギリで掴んだ就職先。特に進言できるスキルもキャリアもなく、のほほん人生を過ごしてきた私らしい慌ただしさだった。
一時期負債に追われていたらしい我が家も、問題のない程度の安定ある暮らしを今は送れている。
ただし今さら私が食い扶持を求めて出戻りすることは不可能……だけれど。
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