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「……映画とかどうですかね?」
『映画かーいいねぇ。ここしばらく映画館で映画見てないなぁ。最近は家でDVD見ることが多くてね。うんうん、他にはなにかある?』
そう尋ねられ頭をフル回転させる。高校生のデートの定番……デートの定番。
「うーんと、買い物とか、お茶したりとか、あとカラオケとかですかね」
遊園地も思いついたけど、残念ながらこの田舎街にはない。隣の県にはあるけれど、初デートで県外……恐れ多いこと山の如しだ。
『カラオケもいいかも。ニコルくんの声って甘い声っていうか、特徴ある声だからバラードとか歌ったらすごく雰囲気でそうだよね。あっ、そうだ。お茶といえばおすすめのお店があるんだ。和菓子カフェなんだけどね。そこの《もなかメイプルあんみつ》がすごく美味しいの。もし良かったら行かない?』
「お、お供します」
褒められたような気がしてなんだか頭がボーッとしてきた。それにしても変わったメニューだな。
少し間が空いて小豆さんが尋ねてきた。
『じゃあどうする? やっぱり映画かな。あ、でも煉瓦町に映画館ってあったかな』
そう言われればなかったかも。小梅市にある映画館はどちらも郊外の大型ショッピングモールの中にあった気がする。
俺は素早く頭の中でシミュレートしてみた。
「確か映画館は《シオン》と《梅タウン》の中にあったと思いますから、煉瓦町からは少し遠いですね。15時半に煉瓦町……となると、朝の早い時間帯に上映している作品を選んで見たあと、バスか電車で煉瓦町に移動すればおそらく間に合いそうですが、どうしましょう?」
『けどそれじゃあニコルくんを一日バタバタさせちゃうし、悪いよ』
「別に俺は、構いませんよ」
むしろその気遣いが嬉しいです。
『ううん、やっぱり悪いから……じゃあ映画館はまた今度一緒に行こう? 明日はニコルくんと初めて遊びに行くんだし、色々お互いのことを話しながら、二人でのんびり街をぶらぶらするっていうのはどうかな。買い物とかお茶とかカラオケも、その場の雰囲気に身を任せてっていうのも素敵だと思わない?』
「思います、ものすごく」
『じゃあ決まりだね。良かったぁニコルくんがオッケーしてくれて。わたしね、こういう自然体な雰囲気のデートに昔から憧れてたんだ』
そんな弾んだ声を聞くと俺まで嬉しくなってくる。しかも、次回のデートの約束までしちゃったし。
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