序章  『恋の保留』

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十六年生きてきて、初めての告白だ。 落ち込んでいるわけじゃない。むしろどうしていいか分からなくて、砂浜から浅瀬に向かい、「わあああああ」と叫びながら走りたい気分だ。 ――考えてみてほしい。 成功率が限りなくゼロに近いと思っていた片思いが、玉砕覚悟で臨んだ俺の片思いが、まさかの形で生き延びたんだから。 延命だよ? 未だに信じられないよ。まるで、夢でも見てるよう……。 それくらいありえないことが起きてるんだ。 どうして彼女が俺なんかを? なぜ? なぜに!? こうした小パニックを二分おきに起こしながら、八月の夜風を全身に浴びて走っていると、……不思議なもんです。いつの間にかその疑問は、ご都合主義的に希望へと変わっていくんだからさ。 ――彼女が俺に可能性を残してくれたとしたら? これって短絡的過ぎる? でも可能性はゼロじゃないと思うんだ。 そう考えるとますます帰りたくなくなる。これでもか、と身体の内側から溢れ出る熱っぽさを、どうにかして冷まさずにはいられなかったんだ。  
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