序章  『恋の保留』

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二 今から約三ヶ月前、俺と彼女は出逢った。 どういう出逢いかと話せば長くなるが、簡単に言うと『定員と客』としてだ。 その運命的な日、俺は高校で仲良くなったばかりの友人の地元を訪れていた。そしてまず、ファーストアクシデントに見舞われたんだ。 『えっ、ニコちゃん早すぎぃ! もうちょいで部活終わるからどっかで待っててー』 そのままプツッ、と電話を切られてそれっきり。駅まで迎えに来てもらおうと電話を掛けたのにそれっきりよ……? 見知らぬ駅前で一人ポツン、となる人の気持ちを考えてみてほしい。……結構切ないぜ? 仕方なく辺りをキョロキョロと見渡してみた。やっぱり知らない町だ。当然どこになにがあるのか分からない。治安が良い町なのかも不明。 ここ《小梅(こうめ)市》はその名のとおり、地方都市の小さな市だ。 これは俺の持論だが、田舎は都会と違ってゆっくり時間が流れていると思う。すなわち暇を持て余している邪悪なお兄さんたちが、昼間からタムロしていらっしゃる。 そんな人たちからすれば、よそ者で眼鏡を掛けているもやしっ子の俺など、「なに見とんねんワレちょこっちこいや」などと格好の獲物……。   ――一刻も早くこの状況を打破する必要があるッ――!   必死な俺は素早く辺りに目を配る。すると変わったものが目に飛び込んできた。 それはカラフルなオレンジ色をまとったギターだった。どうして路上にギターが? と思い近づいてみると、ようやくそれが看板だと理解した。 《ミュージック喫茶・シロップ》。 おお、とすぐに興味を惹かれた。音楽を聴くのは小さい頃から好きだったし、中学三年の夏から受験勉強の息抜きにと、独学だけどギターを習い始めていたからだ。 知らない音楽に触れられるかもしれない、という期待(本音は邪悪なお兄さんたちから一刻も早く隠れたかった)もあり、俺はその喫茶店の扉を開いたんだ。
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