序章  『恋の保留』

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主に音楽の話を熱弁してくれるんだけど、時々、心を見透かされているように、 「こまめちゃんのなに聞きたい?」 と俗物ぽい表情(サングラスの奥の目が笑ってる……絶対)と、いやらしく聞こえる関西弁(関西の人ごめんなさい)で訊いてくるんだよ。 当然、噴火しそうなほど恥ずかしかったけれど、しっかりと彼女の情報を入手することが出来たんだ。 彼女の名前は、小豆(しょうど)あずみさんといって、マスターや常連客からは『こまめちゃん』とか『あずきちゃん』の愛称で親しまれているそう。 県内の女子高に通う三年生で、一年前からここで週三回アルバイトしているとのこと。なるほど、どおりで大人っぽいはずだ。 「ちなみに彼氏はおらんぞ。ワンチャンあるなー、ニコル!」 マスターはそう言ってくれたけど、そんな滅相もございません。 未だに彼女と一言も喋ったこともないような「年下の未熟な子供」を男として見てくれているはずがない。 ただ、それでも良かった。彼女をそばで見ているだけで充分だったんだ。 そんな夢のような日々を送っていた最中のことだった。 ある日突然、彼女のほうから話しかけられたんだ。
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