第1章

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何故‥ オー子は唇を噛んだ。 今まで、あんなに上手く行っていたのに‥ ラボを幼稚園みたいに可愛くしよう、と言い出したのは誰だったのか。 私? 先生? それとも広報の誰か?あぁもう今はそれすら思い出せない。 割烹着を着ると、似合うよとも誰かが言い出した。 そんなアイディアはまるで高校時代の文化祭前日の様にオー子をワクワクさせて夢中にした。 いや、祭りはもっと前から始まっていたのかも解らない。 数学がそれ程得意では無い致命的欠陥を持ちながらも、理系学部のAO入試に合格した時、 いいえ、それよりももっともっと前に中学の感想文コンクールに入賞した時、オー子は自分が望んだその通りに世間は反応する事を知った。 数学より密かなコンプレックス、少女の様に貧弱な胸の悩みさえ即時に解決出来たでは無いか。 インタビューの時には、堂々とブランドの薄手のカットソーを着こなせた。 あれが、作り物の身体の一部だったなんて誰にも知られない筈だったのに~。 オー子は更に唇を噛んだ。 今までは先生がいてくれた、困った時は誰かが助けてくれた。 でも今は‥ オー子は崩れ落ちそうになる自分の身体を自分で抱いた。 大丈夫、何とかなる オー子は呟いた。 だって、だって 私自身が万能のパワーを持っているのだもの。 私自身が万能細胞なのだもの。 また前みたいに世間はすぐに私にケミストリーするわ。 オー子の身体の奥深く、無数の襞の間からオー子自身の万能細胞は分裂を始め蠢き始めるのだった‥。
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