第1章

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「しまった」オー子は唇を噛んだ。 いつも頭の先から爪先まで完璧に細工をする筈が、あの日、あの日に限って忘れてしまったのだ。 再現実験を新たに始める日、タクシーで研究所まで乗りつけたあの日、いつも入れている自分の身体の一部となっている、あの物体を装着するのを忘れた‥ おかげで、オー子の少女のような薄い胸元がネットに配信され、世の男性を魅了したあの肢体は作り物であった事実は周知の知る所となった。 デーモン閣下みたいな窶れメイクを施して、特別に取り寄せた痩せ薬のサプリメントでダイエットに成功した身体に不釣り合いなほど、豊満にたわわに実る二つの果実。 それは、男達の視線を集め、結果男達は目をトロンとさせて、いつもオー子の言いなりになるのだった。 儚げに見せる為の白いカットソーに身を包んで、悲しそうに目を伏せながらもその下で息づく豊かな二つの丘陵。 それを目にして、平静でいられた男をオー子は今まで会った経験は無かった。 ‥まぁ良いわ 今更言っても仕方が無い 、と独り言を言いながら、薄手のニットには欠かせない装備を今日は忘れずに装着するオー子であった。
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