第2章 白い記憶

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年末に飲みに行ったときの、朋哉との会話が蘇る。 「今年もクライミングに行くのか?」 「あぁ」 「蔵王だろ? スキー場に行けばいい女がたくさんいるじゃないか。何でわざわざそんな山の奥に行って、氷に登るんだ?」 「お前にはわからねーよ」 「じゃあ、たまには付き合ってやるか。その代わり、終わったら一緒にボードしようぜ。一人よりも二人組のほうが誘いやすいんだ」 「そんな気力が残ってたらな」 冗談だと思っていたら、出発当日本当にやってきた。 「この日のために、ウェアを新調したんだぜ?」 得意げに胸を叩く朋哉。 「しかたねーな」 ここまで張り切っている朋哉を追い返すのも薄情な気がして、肩をすくめた。 朋哉の持ってきた荷物を車に積み込み、俺たちは出発した。 「ホテルはスキー場の近くに取ったから」 「は?」 「準備万端だろ?」 全く、何もかも準備してたんじゃないか。 追い返してたらどうしたんだろ、こいつ。 運転しつつ、横目で様子を伺う。
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