第2章 白い記憶

3/12
前へ
/63ページ
次へ
一見優男。 ニット帽から、少し長めの茶色い髪がのぞく。 細面で、繊細な印象を残す柔和な顔つき。 ・・・俺とは正反対だ。 だけど、俺は知っている。 こいつが一筋縄じゃいかないことも。 一度決めたことを、覆すことはないことも。 長い付き合いの中で、お互い嫌というほど知り尽くしているからな。 「ま、お前らしいよ」 ハンドルを握りながら、隣で鼻歌を歌う朋哉に呆れつつ、口元が緩むのを抑えられなかった。 たまには、連れがいるのもいいかもしれない。 朋哉なら、いまさら気を使うこともない。 見慣れた都会の、灰色の町並みを通り越し、高速を進んでいく。 目的地に近づくにつれて、景色が変わっていく。 雪がアスファルトを覆い、周りの景色を白色に染めていく。 冬独特の透き通った短い日差しが、雪に反射してまぶしい。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加