第1章 突きつけられた現実

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「・・・朋哉はどうなった?」 「お話をお伺いしてから、お答えします」 「本当だな」 念を押すように確認する。 「ええ。こちらも仕事ですから」 振り向いた俺と目が合うと、少しタレ目の中年男性は頭を下げた。 後ろには、目つきの鋭い男が控えている。 「そのままで大丈夫なので、お話しください」 「何が聞きたいんだ?」 「あなたが発見されてから、この病院に運ばれた後のことは、確認済みです。  私どもが知りたいのは、当時の状況です。  えーっと、杉本 徹(スギモト トオル)さん。21歳。 本籍は埼玉、で間違いないですね。  なぜ、あの場所にいたのか。当日の足取りから、順を追ってお願いします」 「蔵王には、何日に着きましたか?」 「1月14日」 「何をしに?」 「アイスクライミング」 「予定では、何日滞在することになっていましたか?」 「5日」 「一緒に行かれたのは、佐々木朋哉さんで間違いないですね」 「あぁ」 「失礼ですが、二人のご関係は?」 「友人」 「そうですか」 淡々としたやり取りが続く。 狸親父のような刑事は、やんわりと質問を続ける。 後ろに控えていた男が、そのやり取りをメモしていた。 ICレコーダーとかはないのかよ。 妙に冷静に観察する自分がいた。
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