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これは何の罪なのだろうか。
夢うつつの中、彼女は反芻する。
目覚めたと思ったら、意識は後ろ髪を引かれるように右へ左へと振り回される。
今がいつなのかも分からない。
けれど、大きく膨れた腹を抱えて仰臥する自分は間違いなく死ぬ。
この腹は、私に下された罪が孕んだ子。
私を食いものにして私といっしょに死んでゆく――
「母さん」
明瞭な声が耳元に届く。
目を開けた先にいるのは、息子の姿。
こちらを気遣わしげに見る彼は、今年高校に入ったばかり。なりが大きいので落ち着いて見られるけれど、まだまだ若い、そして――彼は父親に本当によく似ている。
一瞬、あの人が来たのかと思った程だ。
「私、寝ていたのかしら」
彼女、高遠茉莉花は息子の慎一郎に言う。
「うん、うつらうつらしていたようだけど。気分はどう」
「今は何時」
「夕方――五時を回ったところ」
「お布団、取り込んでくれた? 都は?」
「え? ……ああ、いつの話の……」
「あら、私、慎一郎君にお願いしたでしょう、あの子……」
言いかけて、茉莉花の意識は、巡らせた頭とくるりと白目をむいた方向へ飛んでしまう。
再び眠りにつく前に茉莉花は言った。
「今がいつで何なのか、よくわからないわ」
きっと、今のやりとりも覚えていないのだろう――。
慎一郎は口元をきゅっと結び、針の穴が点々とかさぶたを作り、青黒く黄色く変色した母の腕を見る。
会話が成立しなくなっている。
父さん、早く来てくれ。彼は思う。
薬でどんどん変わっていく母さんを、ひとりで見守るのは辛い、こわいんだ、と。
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