少女は出会った

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 高遠家は、旧財閥の内のひとつで、家柄と格を何より尊ぶ両親の元に茉莉花は産まれた。彼女の名は外国生活が長い祖父と祖母ふたりがつけたと聞いている。上には兄が三人。一郎、年子で次郎、少し離れて三郎、そして末子の女の子・茉莉花の四人兄妹。祖父母は愛で、兄たちは猫可愛がりし、両親は厳しく育てた。  縁組みで良家との縁を広く繋ぐことを子供たちに課していた両親は、息子以上に一人娘である彼女を、どこに出してもおかしくない子女として育つよう望んだ。  実際、彼女は日本人離れした容姿の佳人に育った。  いつかは親が決めた縁談に従って嫁ぎ、三歩後に下がって夫に従う。それが彼女に定められた運命。  が、三人の兄より頭脳明晰な孫娘の理解者でリベラルな祖父母は、女に学など不要という両親の親とは思えないくらい、茉莉花に能う限りの教育を授けた。  彼女は良い生徒だったし、怜悧な質だったので、祖父母の期待に応えた。花嫁修業に類する事より学問や語学、文学を愛した。特に外国語では兄たちをしのぐ程で、「僕たちのかわりに茉莉花に試験を受けてきてもらいたいよ」と兄たちに言わしめるくらいだった。  もちろん、女の子らしく美しく装うのも得意で、身の回りを気持ち良く彩るのが好きだった。  女は莫迦になれ、と言う両親と反りが合うはずもなく、親が住む本宅より、祖父母の住まいである離れに入り浸り、終いには机や布団を持ち込んで住み着いてしまった。  何が何でも人の言いなりにならない。  私は私の道を生きたいのだから。  彼女の頑固で一途な気質は幼い内に確立した。
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