第1章

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小指に付けて口に運ぶ 「しょっぱい、です」 「ただのナトリウムだからね。」 「からかったんですか」 「いいえ」 先生が、今度は親指で粉を掬った。 「じゃ、これは?」 唇がトントンとつつかれる。 背中に体温を感じる。 指しか直接触れていないのに逃げ出せない。 力で抑えつけられてるわけじゃないのに、息が出来ないほど。 焦らすように親指の腹が唇をなぞる。 「舐めて」 こじ開けられた。 「噛んでも良いよ」 居場所をなくして引っ込んだ舌の側面を指が掠めた。 ふっと先生の息が耳にかかる。 ゆっくりと咥内を親指で練り、残った指は耳と顎を爪弾く。 指を抜いて、先生は口を拭いてくれた。 「もし、さっきの塩と違うものを感じたのなら、それは脳の錯覚だよ。」 笑っているのが憎らしい 「おや」 手をのばして頬に触れる。 「そんなに怯えなくてもいい。 塩が付いていた」 そう言って、見せつけるように指の先を舐めとった。
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