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「ああ、楠本さん。もうすぐ受験ですね。といっても推薦だから余程の事がない限り心配ないでしょう。
まあ、一応報告にいらっしゃい。おめでとうくらいは言ってあげます」
廊下で会った時にそう言われて、1ヶ月後。
合格通知を昨日受け取ってから、ざわざわする胸を何度もたしなめた。
理科室の前まで来て、やっぱり引き返そうとした時に、こちらにやって来る先生と目が合った。
「おや、まさか帰るつもりですか」
笑顔にそぐわない絶対零度の声。
バナナで釘が打てマスヨ。
後じさりしたら、戸を開けられて、そのまま室内に追い詰められた。
「用があって来たんでしょう」
デスクに手荷物を片付けながら、先生が言う。
そのいかにも興味なさそうな様子に、少しムッとする。
「先生が来いって言ったから」
「ああ、言いましたね。
合格おめでとうございます。
そうですか、楠本さんは私が来いと言ったら来るんですか。
それは有益な情報です。」
合格通知を一瞥して、おめでたくもないように。
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