第1章

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「せっかくですが、もう卒業ですから役立ちそうに無いですね。 言葉だけでは不満ですか。 ご褒美でもあると思ったんでしょう」 トントンと本を揃えながら言う。 「そんなこと、思ってません」 「そうですか。 ああ、おめでとうございます。」 「それはさっき聞きました。」 先生が眼鏡を外して拭いている。 「違う意味ですよ。楠本さんに初めての彼氏が出来ておめでとう、です」 「え?」 「可哀想に、若いのに耳が遠いんですか」 「彼氏なんて居ません」 「目の前に居ますが」 「………しばらく受験勉強で睡眠不足だったので、帰って寝ます……」 「それはいけないですね。よく眠れるバスソルトを調合してあげましょう。それとも…… ご褒美の方が良いですか」
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