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「おじさん、おばさん、こんにちは。話し声が聞こえたから、もしかしてと思って……」
「あぁ、ついに気がついたんだよ。いつもありがとう。さぁ、入りなさい」
「はっはい。ひ、紘夢っ」
大聖だった。それは、まぎれもなく、大聖だったのだ。長身で、さわやかで、ちょっと強引で、ぼくのヒーローである、あの大聖だったのだ。
ぼくは歓喜する一方で、またもやなにが現実かわからなくなっていた。そんなぼくを大聖は、いつものように、夢のなかのように、強く強く抱きしめてくれた。そして、ぼくの顔中にキスの雨を降らせた。
大聖は夢のなかのままの、17歳の大聖だった。でもぼくは、42歳の中年だった。はたから見たら、さぞかし奇妙な光景だったろう。それに戸惑ったのか、気をつかったのか、父さんと叔母さんはそっとカーテンの外に出ていった。
「また会えたな、紘夢。俺がわかるか?」
「た、大聖……やっぱり、きみは大聖なんだね?」
「あぁ、そうだ。どうやら、俺たちはみんな同じ夢を見ていたらしい」
「えっそんな……じゃあぼくたち……。でも、ぼく、本当はこんなおじさんで……」
「紘夢、見た目とか年齢で、俺はお前を好きになったんじゃない。俺は、紘夢が紘夢だから好きになったんだ」
「大聖……ぼくだって大聖のこと……好きだよ」
「やっとお前の口からその言葉が聞けたな。じゃ俺と付き合うか?」
「ちょっと待ちたまえ。抜け駆け禁止だって言ったのはきみだろう? ぼくの存在をお忘れなく」
と、カーテンを開けて颯爽(さっそう)と現れたのは、なんと蒼空だった。やはり、夢の中と同じ、現実離れした美形の、王子様のような蒼空だった。そして、蒼空もソフトで甘やかな口づけを、愛おしむようにぼくにくれた。
「しばらくはぼくたち三人で共有するという約束をしたばかりじゃないか。それは現実だって同じことだよ。ね? ヒロは異論ないよね?」
「えっ、うん。蒼空もこんなおじさんのぼくでもいいの……?」
「何度でも言ってあげるよ。ぼくはヒロを愛してる、誰よりも。高校生のヒロも、おじさんのヒロも。おじいさんになってもずっと」
「そ、蒼空……。ありがとう。ぼくも蒼空のこと、愛してる」
「あいかわらず、気の多いヤツだな……。ま、それは夢でも現実でも変わらねぇってことか」
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