17人が本棚に入れています
本棚に追加
真夜中の暗闇を少し明るくしてくれるのは天からの白く見える氷の粒。
あまりに多いと目の前が見えなくなる欠点はあるが今降るの光は量も大きさもちょうど良い。
久し振りに肌に感じる刺さるような空気。
動きが鈍くなる手のひら。
真っ白な地面に付けた足の冷たさは気温の低さを物語っている。
「僕は今、外にいるんだな」
そして、当たり前の事を染々と言ったのは羽柴 慧[ハシバ ケイ]。
今のは、彼の独り言。
彼の周りには人は居ない。代わりに雪の壁に覆われていた。
とは言っても車道側は流石に人の姿が確認出来るよう膝位の高さに調節はされているけど。
慧が住む町、【雪咲 ユキサキ町】は
その字の如く雪が咲くように降ることから名付けられた町。冬になれば大量の雪も降り積もる。
街灯の光も蓄えたそれは更に輝きを増して慧の進む道を照してくれた。
車も人も横切らない。一見、似たり寄ったりの景色を見ながら一歩一歩と足を進める。
「……このまま降り続くと除雪入るかな。早く帰らなきゃ」
慧はまた独り言を呟いた。
静かすぎる今の街に少し寂しさを感じているのかな?
静かすぎるのはでも当たり前。
今の時間は午前2時なのだから。
ちなみに、年齢は21歳なので警察にお世話になる心配はない。
しかし、職務質問位はあり得るので出来れば見つからない事を祈りたいところではあるけど。
いや、警察だけではない。出来れば誰にも会いたくなかった。
だからこの時間に出掛けようと思ったのだ。
___そう思っていたのに。
慧は30分程適当に歩いていてそろそろ来た道を辿ろうとしていた時、500メートル程離れた町営住宅の前にある公園に女の子がいるのを発見した。
最初のコメントを投稿しよう!