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海晴は、窓を見ずに、瞬だけを見ていた。瞬はポツリポツリと、自分の両親が殺された事、その経緯を話す。そして、その能力も自分が引き継いでしまっていることも、正直に打ち明けた。
瞬のポラロイドは危険だった。
「さっき撮ったのは、処分してくれ。俺以外が処分する分には安全。変に残しておくと危ないから」
他に、『神の御使い』との経緯も打ち明ける。瞬が、御使いであることも、多分重要な事なのだろう。
「…とんでもないな。俺、この話、聞いてからだったら、自信なくて、ダメだったな。でも今は、真剣に護衛しなくては失うと、すごく分かった」
そして、モモ。染色体YYの子供。
「Yはな、俺もそうだけど、予期せぬ遺伝子を発動させた。それは、生命を滅ぼすのかもしれないし、護るのかもしれない」
海晴は、アイスを食べながら、ポツリポツリを喋っていた。
「Yが完全だった時代は、戦闘が主だったのかもしれない、どの個体も、異常に戦闘能力が高かった。他の能力を失ってまで、戦闘を高める」
Yが滅びるという事は、平和な世界ということなのか。
「モモも大きくなったら、戦闘能力が発現するかもしれない」
でも、モモはまだあどけなく眠っていた。
「俺も、実験体だけど、Yの復活が良いことなのか分からない。でも、親が居て、護りたい奴がいて、強くありたい」
海晴が、瞬に握手を求めてきた。瞬は、恐る恐る、その手を掴んだ。
ボキボキという鈍い音が響く。
「あっ、ごめん。つい、力が入った」
瞬が、慌てて手を離そうとしたが、遅く、骨が折れていた。
今度は、治癒のために、海晴が逃げる瞬の手を取る。
「急いで治す」
海晴の見せたかった夜の海は、一杯に広がる星空と半分に世界を分けている。きれいなものを見せたい、おいしいものを食べさせたい。瞬には、海晴の好意はとても、うれしい。
「俺、刑事なるのが夢」
「そうか、それまで護衛できるように頑張るよ」
赤羽が、夜食に、又サンドイッチを持ってきてくれた。エビフライのサンドで、凄くおいしい。
「でも、瞬。刑事を引退したらでもいい、ここで、一緒にレストランをやろうよ」
「それも、悪くない」
第五章 子連れ探偵社
モモを連れて帰ると、神宮寺は泣くほど喜んでいた。一時的な保護だと言っても、神宮寺は喜び続けていた。
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