第1章

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 瞬はそっと、研究所が愛のない子供は造らない主義だったと伝えると、過ちがあったと素直に認めた。  でも、北原は記憶のない事実なので、伝えないで欲しいと、瞬は、神宮寺に念を押される。  研究所に拉致されたのは、北原一人ということだ。  モモは、水元が保護という名目になっていたが、北神探偵社にもよく遊びに来ていた。水元の育児疲れのためだ。 「神宮寺さん。意外に子どもが好きですね」  北神探偵社の上の神宮寺の自室で、神宮寺、腕まくりしてモモを風呂に入れていた。 「まあ、瞬の面倒も見るしな」 「…俺は、子供ではありません」   瞬は、神宮寺にタオルを渡す。北原とモモは互いに近寄らないが、それは性格が似ているせいだと分かった。  瞬が、モモに服を着せ、北神探偵社へと戻る。 「新しい研究所が出来るまで、俺は、モモの護衛だそうよ」  水元、ソファーでぐったりしていた。モモは結構やんちゃで、すぐに逃げ出す。なまじ頭がいいせいで、水元モモを捕まえるのは一苦労だった。  奥のディスクでは、北原が事務処理を行っていた。 「子育てするならば、帰れ、瞬」  北原は冷たいが、それは、モモが眠そうにしているのを見ているせいもある。 「それでは、仕事も入っていないようなので。帰ります」  瞬は、海晴と同居しているが、そこには水元も住んでいる。瞬が、海晴の実家に行っている間に、ボロボロの家を、水元は住める状態にまで改築していた。  外見は幽霊屋敷だが、中はかなりのハイテクになっていた。全部屋、床暖房、窓には防弾ガラス。護衛室まである。  瞬、水元、海晴の部屋は別々で、水元の部屋は二階のほとんどの面積を占めているが、中身は秘密だそうだ。二階のほんの一角に、瞬の部屋があり、一階に海晴の部屋がある。  一階には、他に何故か露天風呂もあった。街中で露天はどうかと思うが、この家は一般市民からは見えていない。露天風呂は、夏は 水を貼り、プール代わりにするのだそうだ。  モモは、水元の部屋に居ることが多かったが、暫くして不思議な現象が起きた。  モモが、北原に懐いてしまったのだ。北原の知識は、モモの好奇心を煽るらしい。水元が目を離すと、モモは北原の元に一人で行ってしまっている。  難しい六法を読むモモ。神宮寺が絵本を持って行っても、見向きもしない。 「モモ」  何度も、神宮寺は絵本を読ませようとする。 「邪魔、神宮寺」
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