第三章 死から来る者

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「あれ、猫は?」  瞬は、 その猫でさえ全く捕捉できていなかった。 瞬の脳裏に、 実力不足という言葉が浮かんでは消える。  やや近くで急ブレーキの音と、 人の悲鳴が聞こえた。  又、走り出した亜里沙と瞬の前で、 国道沿いに自転車が倒れていた。  自転車から放り出された人が横たわる前を、 黒い猫は悠然と歩いていた。 金と銀の目を持つ黒猫。  自転車の横に止められたトラックから、 年配の男が出てきて何かを叫ぶ。 近くのスーパーから買い物客が出てきて、 あっという間に人だかりができた。 その間も、 猫は血まみれの人の前で、 じっと倒れている人を見ていた。
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