344人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれ、猫は?」
瞬は、
その猫でさえ全く捕捉できていなかった。
瞬の脳裏に、
実力不足という言葉が浮かんでは消える。
やや近くで急ブレーキの音と、
人の悲鳴が聞こえた。
又、走り出した亜里沙と瞬の前で、
国道沿いに自転車が倒れていた。
自転車から放り出された人が横たわる前を、
黒い猫は悠然と歩いていた。
金と銀の目を持つ黒猫。
自転車の横に止められたトラックから、
年配の男が出てきて何かを叫ぶ。
近くのスーパーから買い物客が出てきて、
あっという間に人だかりができた。
その間も、
猫は血まみれの人の前で、
じっと倒れている人を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!