第1章

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雪は解け、暖かい風が僕らの村にも吹きはじめた 頃に、彼はやってきた。 僕たちも、大人たちも彼の姿を見つけるとすぐに駆け寄って、 「また来てくれてありがとう」「すぐにご飯を用意しましょう」「今日はパーティーだ」等と口々に言っている。 「ちびっこたち、元気にしてたか?」 彼はしゃがんで僕たちの顔を一人一人見て、にっと笑った。 黒髪を隠すベージュ色のニット帽に足まで届きそうな長いコートを身につけ大きなリュックを背負った彼は 「少し休んでから遊ぼうな」 と言って、大人たちと話しながら歩いていった。 夜になると、みんなは彼のためのパーティーを開いた。パーティー会場の広場は、乾杯の合図と共にお祭り騒ぎになる。 僕はお肉を頬張りながら「ようこそ! 幸せを運ぶ旅人さん」と書かれた大きい白い布を見つめていた。 「レン」 突然、僕を呼ぶ声がして振り向いた。お姉ちゃんが僕に向かって手を振りながら歩いてくる。 「もうはじまってたのね」 「うん」 「レンはあの旅人さんに会うのは何回目?」 「三回だよ」 お姉ちゃんも白い布を見つめる。 「あの旅人さんはすごい人だよ。この村のみんなを笑顔にしてくれるんだから」 確かに彼がこの村に来ると、笑顔にならない人はいない。きっと彼が「幸せを運ぶ旅人」と呼ばれている理由はそういうことなのかもしれない。 僕は再びお肉を口に入れながらそう思った。
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