第1章

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他の実験はさておき…… 私はこの第2薬理学研究室の 七階にある屋上に設置された 野良犬達のお世話の手伝いを する事になりました。 犬が好きでしたから 数日置きに実験に連れ出される 犬を見るのは辛かったです。 大切にお世話した犬が実験に…… 私の気持ち的には地獄のような? それは同じ小屋で過ごす犬達も 同じ気持ちみたいです。 餌をあげたり、小屋を掃除したり、 お散歩に連れて行ったり…… その時に仲良くしてる犬同士が 分かるようになります。 困ったのは私と犬も 仲良くなってしまうんです。 なついてくれば愛着も 沸いてきます。 野良犬だけどナカナカ 可愛い犬もいます。 が、数日置きに連れ出されては 小屋に戻ってこない犬を 仲良しの犬達も……何をされたのか? だんだん……分かるのでしょう。 一匹、居なくなれば…… また次、その次…… 拾われてくる新入り野良犬も 増える。 不安になりますよね? だんだん、小屋から 連れ出される事を嫌がりますもん。 仔犬は手間隙掛かるし、 愛着が沸くから拾ってきては ダメなのです。 仔犬じゃなくても 愛着は沸くんですけど? ああ、私も困った。 どうしたら良いのかな……。 だけど……いつかは…… ああ、悲しいけれど これが現実ですもん。 ある日、何かの血統書付きかと 思われる犬と雑種との交配で 出来たと思われる綺麗な白い 野良犬を大学院生の先輩が 拾ってきました。 雌でした。 あんまりに綺麗な犬なので 「何処かの飼い犬 じゃないんですか? 」 と質問しましたが…… 「違うよ。 近くの 川沿いを随分、前から ウロウロしてたんだ」 「そうですか……」 「腹が減ってるらしいから 此処に居れば数週間は 食べらるだろ? 」 「まあ、そうですね」 「飢えたら可哀想だろ? 」 悩む所だけど確かにその通り。 「分かりました」 こうしてその雌犬の飼育が 始まりました。 名前を付けると愛着が 沸くので研究用の捨て犬には 拾ってきても名前を 付けちゃダメなの。 その雌犬は直ぐに私に なついてくれて可愛くなりました。 他に同じ犬小屋で仲良く なれた犬もいたようですが 仲良くなった犬から先に 実験に連れて行かれました。 その度に心配そうだったり、 犬でも怯えてきます。だんだん 瞳で私に "助けて" と訴えている ような感じを受けるように なってきたのです。 私は段々、見ていて辛くなり、 数日、お休みする事にした。
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