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先輩から電話が来ました。
「どうしたの?
風邪でも引いたかな」
「いえ」
「ああ、そういえばさ……」
「はあ? 」
「俺が拾ってきた白いメス犬は
覚えているかな? 」
「……はい。覚えてますよ」
元気ですか? とは敢えて
聞かなかった。聞けなかった。
ああ、とうとう実験に
使われちゃったんだ!
涙が出そうになった。
ギュッと目をつむり、
次の言葉を待った。
「あの犬さ……逃げたんだよ」
「に、逃げた?! 」
「それが……逃げるだけじゃなく、
屋上からダイブしやがって大怪我
したけど生きてたんだよ」
い、生きてた……良かった。
私はホッとはしたが怪我が
気になった。
「それで、大怪我は? 」
「一応、治療したよ」
「ああ、良かった。で、
状態は? 」
「内臓破裂とかは大丈夫だった
けど複雑骨折が酷いから犬の
新しい痛み止めの実験を兼ねて
アイツは死ぬまで研究所内で
飼う事になった」
「死ぬまで飼う?!
実験には使われないで
済むんですね? 」
「そうだ」
「本当に良かった」
「名前が付いたしな」
「名前が……」
「明日は来いよ」
次の日、第2薬理学研究室の
屋上の犬小屋に行く途中、
先輩に会った。
「プッ、やはり愛着が
沸いてたんだなぁ~。
フランケンは治療中だから
此方だ」 と違う場所に
案内された。
「フランケン? 」
「アイツの名前。不死身って意味。
七階の屋上からダイブして
生きてるなんて不死身だからな」
不死身……フランケン……
白くて綺麗な可愛いメス犬なのに?
「ここだ」
包帯だらけのあの白い犬に
私は近付き……
「大丈夫? 」
と、頭を撫でると優しい瞳で
私を見つめ返してくれて
私の手を舐めた。
涙が……零れた。
私は守ってあげられなかったけど
アナタは自力で脱出したんだね。
こうしてフランケンは
生きてる限りは研究所で
飼う事が出来る犬になった。
死刑囚でも死刑執行の際に
失敗して生き残れた場合、刑罰は
執行されたとして生きていける
んだよ……とは助けた先輩が
言っていた。法的な詳しい事は
私には分からないけれど。
犬好きな私には大学院での
犬での実験は無理だ。
それから数年後ーーー
今はその大学に居ないから
分からないけどフランケンは
元気で無事に寿命を全う
出来たかしら?
ダイブして死んだら
犬でも自殺よね?
寿命なら今頃は天国かな?
どうか
幸せでありますように……
ー了ー
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