癒やしの光

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   弁明しようのない感情がオレを襲った。自分でもわからない。なぜイチカたちを助けたいと思ったのか。なぜ勝算のない相手を前に飛び出してしまったのか。愚劣で感傷的な行為だと批難されても仕方がない。どんな罵詈雑言も甘んじて受けよう。決してほめられた選択ではないことは承知している。だが、ここでふと疑問符が浮かぶ。称賛に値する選択ではないにしても、果たしてそこまで批難されるべき選択だったのだろうか。オレの軽率な行動が、他の生徒に多大な危害を及ぼす可能性があったことは否めない。それでもあえていいたい。ほんとうにまちがいだったのかと。  わからない。サオリコモンドの価値観は、いまをもって理解に苦しむ。オレとてイチカたちとはそれほど深い付き合いはなかった。ただあいさつを交わし、ひとことふたこと言葉を交わす程度に過ぎない。だが目の前でむざむざ殺されそうになっている姿を黙殺できるほど、オレは無慈悲になりきれないだけなのだ。
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