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お師匠さまはすっと立ち上がり、いまだ水面にただようジュリアを抱き上げた。目の前に現れた彼女は変わり果て、酸鼻な傷口がオレの涙を誘う。嗚咽がもれぬよう口唇をきつく噛みしめると、血の味がじわじわと口内に広がる。お師匠さまはなにもいわない。ただ立ち尽くし、オレの頭を優しくなでるだけである。
「ごめん、ジュリア。オレのために、こんな姿になって……。ほんとにごめん」あふれてくるのは涙と謝罪の言葉だった。ジュリアの安らかな顔は、オレへのせめてものつよがりだろうか。「安心しろよ。おまえの仇、ちゃんと討ったから。ムスクコッコはオレが殺したよ」
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