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「でも……」にぎりしめたこぶしは震えていた。「相手は人間ですよ。グランブじゃないんですよ。同じ人間を殺すなんて、オレには――」
「ふざけるな」お師匠さまが声を荒げる。「死んでも殺してやるんじゃなかったのか。きみの怒り、憎しみはその程度のものだったのか。その子がどんな気持ちで死んでいったのか、どれほど無念だったのか、考えてみろ。もっと生きたかったはずだ。死にたくなんかなかったはずだ。こいつさえ現れなければ、誰も死なずにすんだんだ。それともきみはこいつを許し、すべてをなかったことにするのか」
「わかってます! わかってますよ!」オレは自分自身にいい聞かせるように叫んだ。「こいつを許すことなんかできない、頭ではわかっているんです。でも、殺すなんてできない!」
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