01◇舞い込む朗報

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  真雪は自分の風変わりな趣味をより充実させる為“中途半端な時期の転入生”を日々待ち望んでいた。 尚としてはこの名門蘭学園の途中編入試験を合格出来る者は居ない、という学園に根付いた固定観念を例外なく持っていたので転入生が来ると聞いた時、真雪が裏で手を回したのではと一瞬疑った。 その理由に蘭学園の途中編入試験は難攻不落と言われる程に超難関で、長い歴史の中で合格者は過去一人も存在しない事が挙げられる。 蘭学園に転入生は来ない、これは生徒教師の共通の常識で暗黙の了解だったのだ。 「ふふ、明日が楽しみだね!ね、尚君!」 にっこり満面の笑みの真雪と反対に尚は憔悴しきった顔をした。 真雪はこれまで保健委員をはじめとした幾人かの生徒に『今年の中途半端な時期に転入生が来る可能性が高い』と予言紛いな事を言っていた。 尚の居る保健室で行われた事だったのでその時は真雪の何の確証もない言葉を熱心に聞く生徒を横目に、胡散臭いと鼻で笑ったものだ。 だが真雪の予言(信者にとって)は見事当たってしまった。 恐らく明日には『久遠様のお言葉が当たった!久遠様はやっぱり正しい!』と真雪に吹き込まれた生徒達が広め、また信者を増やしていくのだろう。 光景がありありと簡単に浮かぶ。
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